桃
山梨にある取引先から、会社に中元が届いた。桃だ。チーム員1人に一つ配付された。
丁度外出先から戻ったら、机の上に丸いものが鎮座していてびっくりした。
周辺に良い香りが漂う。良く熟れているんだろうな。早いうちに食べないと。
いったい私はこの桃が気に入った。両手で包むと丁度隠れる丸さも、肌色と桃色のグラデーションも。色も形状も名前もなんという色気のあることよ。
しかし今夜は御茶ノ水で人と逢う約束をしていた。桃持って逢うのかあ・・。
かばんに潰れないようにこっそりと入れる。
聖橋口を降りて、少し歩くと丸善がある。
「あ、そうだそうだ」
丸善によってみようか。そして桃を本の上に載せて去ってみようか。
いや、やめた。
それが檸檬であれば、暫くは格好がつく。しかし桃だ。ぐじゅぐじゅになって、本が汚れて
ショウジョウバエなんかが飛んでしまうのではないかしら。そんなに早く腐らないか・・。
逆に本屋中に良い香りがするのかな。
まあいずれにしても、もったいない。だいたい私は既に待ち合わせ時間に遅刻しているのでそんなアホなことをやっている時間は無い。
あの丸善は京都だしね。もう閉店しちゃっているし。
「桃もらったの。」
「ふうん」
「冷蔵庫に入れないと、と思うんだけど」
「今言うセリフかね。大体冷蔵庫に入れると茶色くなるの知らないわけ?」
そうなんだっけ。普段桃なんて腐りやすいリスキーな果物は普段買わないのだ。
リンゴとかおれんじとか。つまみながら食べられる葡萄とか。皮むかないチェリーとか。
でも冷たい桃が食べたくて、帰宅したら冷蔵庫にほおりこんだ。
翌晩、(朝は時間がない)、みたらやっぱり茶色かった。でもとても甘かった。
by violatsubone | 2008-07-23 20:30